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中距離

5月を上書きする。部屋に帰っても誰もいない。五月場所をひとりでみる。ラムネをひとりで飲む。そばはつくらない。露天風呂がすてきな旅館は行かない。植木市も近所の神社も美味しいジェラート屋さんも行かない。

社会人になって一ヶ月が経った。研修では、組織の一員になるということ、をひとりひとり発表して、ちゃんとした同期のちゃんとした声での模範解答をきいて、ちゃんとしてるなあって思った。

今年は花粉症のひとだった。生活しているだけで涙がボロボロとでてくるおかげで、随分と涙というものを考えさせられた。入り込んできた異物を外に押し返そうとして涙がでてくるのは、すごく自然で、からだの原理にかなっている。つまり、かなしいから涙がでてくるのはすごく不思議なことのように思う。かなしいと思う前になんだかわからないけど気の緩んだすきに涙がでてくることすらある。おもしろい。

職場には屋上がある。小学生の声がきこえる。布を敷いて、イヤホンで外を遮断して、目を瞑ると野外フェスにいるような錯覚をおこせる。まずい弁当もなんだか寛容に食べられる。お腹が膨れればそのまま布にくるまって眠る。一応日焼けが気になる。

「いつもにこにこしてるね」なんて言われると、もう、ゾッとする。

うそっぽい。茶番。完璧につくられている偽りの空間に力をかけるけど、やっぱりむずかしくて、生きるってたいへんだなと嫌気がさす。常識とか当たり前とかじぶんのものさしを他人に押し付けないでほしい。

7月はクロアチアに行きたい。