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大晦日

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141231 7日目 デリー

大晦日だというのに、そんな気がしない。

去年の大晦日は何をしていただろうか。狂ったように民法と戦っていた気もするし、お母さんと夕飯の買い物に向かった気もするし、まったく、記憶は都合よく曖昧に美化される。

一泊800ルピー(1520円)のダブルルームにひとりで悠々と泊まった。転がれる広々ベッドに、温かいシャワー、窓からはひとびとの歌声(と犬の無駄吠え)。貧乏性のわたしは一泊で1500円が飛んでいくことをためらったけど、泊まってみれば金額相応の快適さがあった。

宿ではお兄さんが新年の飾りつけをしていたので、チャイをごちそうになりながら眺めていた。お兄さんもまた、ヒンディーソングを口ずさんでいた。Tum Hi Hoを知っているか訊くと、もちろんだと言って唄ってくれた。わたしも少し小さな声で混ざった。

ノビが宿まで迎えにきてくれた。朝から何も食べていなかったので、屋台でバナナを買った。一房30ルピー(57円)。日本のバナナより少し小さいことを差し引いても安い。バナナの食べ放題。一本食べても、まだ膨らむ皮がたくさんあって、また一本、また一本と、だんだんと中身のない皮が多くなっていった。普段は3本くらい食べるかなと言う彼に、食べすぎでしょとツッコんだけど、結局わたしは4本、彼は5本食べた。

メトロに乗った。ここのメトロ開通には日本が大きく関わっていると彼は教えてくれた。そう言われてみると、路線図や柱など似ているといえば似ているし、気のせいと言われれば気のせいかもしれない。少し調べてみると、三菱が省エネ車両(走ってるときに蓄えたエネルギーをブレーキのときに発電)としてつくったとか、なんとか。非常口のマークはおなじみの緑地の走っているひとで、頭が少し小さかった。看板はロンドンのメトロにとてもよく似ていて、赤丸に白と藍色が映えていた。

おなじところとか、似ているところとか、ちがうところとか、デザインに限ったことじゃないけどそういう自分の引き出しをもっともっと増やしたい。そしたらみるものもちがってみえて、思うところもまた変わってくるのかなと。

メトロから降りて、コンノートプレイスのセントラルパークにいった。大きな公園で家族連れや若者などひとびとがおしゃべりをしていて、大晦日とは思えないゆったりとした時間が流れていた。芝生で寝そべると、サイコーだった。くもり空なのにサイコーだった。雰囲気に酔ってしまいそうだった。この空間がずっとどこまでも引き伸ばされればいいのにと思った。ノビは「観光地とかいかなくていいの」と訊いてきたけど、いいんです。寧ろ本望。小さい男の子と女の子が走り回っていて、お父さんとお母さんが芝生に座りながら見守っているなんとも幸福な日常よ、どうもありがとう。

ノビが退屈そうにしていたので、後ろ髪ひかれながらもまた来ようと思い、去った。そうしてノビの大学にいってビリヤニ(具だくさん味付きチャーハン。スパイスに抵抗のあるひとでも受け入れられそうな味付けでおいしい。)とマサラドーサ(薄いクレープの皮にカレー風味のじゃがいもをくるんだもの。ココナッツとかチリソースとかソースが別についてくるものもある。おいしい。)とヨーグルトをたべた。ヨーグルトは生クリーム仕立てまちがいないわと確信するくらい絶品で、今後みつけたら絶対また食べようと空容器を写真におさめるほどだった。

ゴツゴツした岩のたくさんある、秘密基地のようなところに連れていってもらった。入るときに警備員さんのチェックを受けたので随分とちゃんとしたところだなと構えた。なんでも、酔っ払った大学生が岩山から転落する事故があって、お酒の持ち込みが禁止されたんだとか。大学生だなあと思った。

だんだんと日が暗くなっていって、はるか上を通る飛行機を何機も見送った。飛行機の数え方がなんで「機」なのか訊かれたけど、機械だからだよと説明になっていない説明しかできなかった。彼と話していると、普段意識しないところに目を向けさせてもらえる反面、自国を知らなすぎる自分を思い知る。もっと関心をもとう。

それからPuと合流して空港に向かった。仕事を終えて日本からやってくるお姉ちゃんを迎えるためだ。Puはなんとまあ綺麗にピンクで飾りつけられた花束を持っていた。それをみてノビは焦ったのか「何か買ったほうがいいかな」と訊いてきたので、チョコレートを勧めた。チョコレート一枚でも自分のために買ってくれたというだけでうれしいもんだよと言ったけど、彼に伝わってないことは表情でわかった。

どうやら空港に向かうタクシーの中で新年を迎えたようだった。タクシーから降りると、花火なのか爆発音が何発も響いて、彼らと道路でHAPPY NEW YEAAAAAAAAARと言い合った。変なかんじだ。空港から出てくるお姉ちゃんをみたらもっと変なかんじがした。「次会うときはインドだね」と言って埼玉でさよならして、それから一ヶ月。本当にインドで会うことになるとは、なんとも、うそっぽい。うそっぽいというか宙ぶらりんで地に足ついてないまま感。

 

そんなこんなで、今夜はダブルベッドにふたりで眠った。