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声、うまく届いているのかなと思った。

もっと小さな声で話しなさい、と母はわたしによく言った。昔からそう注意を受けていたから、わたしはひとより声が大きいんだと自覚していた。(余談だけど、ひとから指摘されて自分の輪郭を知っていくんだよね。母曰く、わたしは声が大きくて、早口で、「さ」が多いひとらしい。)

そんな声の大きめなわたしだけど、喋りかけたのに、表情も素振りも何も変わっていない目の前の相手に、アレレと思うときがある。確かにわたしは相手に働きかけたのに、相手のスペースに一歩たりとも入られていないような、そんな感覚。実は頭の中で自己完結させていただけ、なんて。

とあるライブでボーカルが「寿司屋でかき消されるような僕の声、ちゃんと届いてますかー」ってお客さんに問うシーンがある。まさに、これ。

渦巻く感情を表現するのが苦手だから、近い言葉を借りてきて、入り込みながら運んでいる。歌詞とか、書籍とか、お偉いさんの名言とか。
借り物だから届かないのかな、なんて。


相反してるから、声量云々の話でもないんだろうね。